宇宙機用電源システムの開発(Power Electronics for Spacecraft Power System)
一般的な人工衛星や宇宙探査機はそのエネルギー源を太陽電池パネルに依存しています。また、ロケット打上げ時や軌道上運用時に衛星全体が地球の影に隠れてしまい太陽電池パネルが電力を発生できない際にはバッテリが電源として機能します。人工衛星の電源システムでは太陽電池パネルの電力を制御するためのコンバータが不可欠であり、更にバッテリと太陽電池の特性を最大限に活かすための補助コンバータであるバランス回路と部分影補償器もそれぞれ必要になります。よって、合計3台のコンバータが必要となるため、電源システムが複雑化ならびに高コスト化するという問題を抱えています。
研究室では、これら3台のコンバータを集約することで電源システムの飛躍的な簡素化と低コスト化を同時に達成可能な「統合型コンバータ」の研究を行っています。統合型コンバータは既存のコンバータ、部分影補償器、バランス回路を適切に回路素子を共有させることで導出することができます。しかし、人工衛星や宇宙探査機では、小型軽量であり、且つ高信頼性のコンバータが求められているため、最適な回路方式の選定や素子共有手法が重要となります。例として、共振形倍電圧整流回路を用いた部分影補償器と汎用コンバータを適切に統合させることで、システム全体としてのスイッチが1つのみである「一石式統合型コンバータ」を導きだすことができます。スイッチが1つだけであり部品点数を最小限に抑えることができるので、信頼性の高い用途に最適な方式です。また、スイッチトキャパシタ式部分影補償器と汎用コンバータを適切に統合させることで小型軽量の統合型コンバータを導出することもできます。このように、回路方式と共有手法の組み合わせは無限であり、小型軽量と高信頼性を同時に満足できる統合型コンバータ方式の模索を行っています。
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